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診断と治療について


 歯科治療における診断のありかたは、疾病の確定や状況把握に関わる客観性のある診断と、治療法の選択に直接関わる診断に分けられます。 両者は別物ではありませんが、一般医科の内科的診断とはおおきく異なります。 歯科においては病態の診断だけでは治療結果に結びつきません。 治療スキル(技術)と長期的評価に裏打ちされた、この病態なら治療法はこれらの方法から選び、この水準でおこなえば、これが予知性が高いだろうという診断が必要とされます(平準化されうるものなら、これを基礎に標準治療が設定されます)。 一般に治療に関わる診断は客観的普遍的なものばかりではありませんので、医療施設で大きな違いがおこるのも当然です。 セカンドオピニオンを求められる方が多いのも理解できるものです。

 たとえば、ある状態を改善修復していこうとされる場合、目的に応じた処置・治療が的確におこなわれることが前提になります。 一例として下図のように歯周ポケットが10mm近くにおよぶ歯周病の進行や根の先に病変がある場合、通常奥の2本の臼歯は数年で失うことが多いでしょう。 そこで状況を把握したうえ、入れ歯を回避し、インプラントも使用しないというなら残存歯をベストを尽くし復活させるような治療となります。 下記症例の場合、歯周病の外科的治療で歯根面の汚染を完全に綺麗にしたうえ、歯のない第一大臼歯部位から骨を採取して欠損部位に移植する処置と、確実に根尖病変を直すための感染根管治療がおこなわれています。 かぶせ物である修復物も精密な適合と掃除のしやすい形態で(再び歯周病が進行したりムシバの発現を防止するよう)清掃性を高めています。 ここまですれば、歯根が破折するような不可抗力の事態がなければ、この領域は10数年単位の快適な環境整備ができたこととなります。 また下図は腫脹と動揺がひどいうえ歯槽骨が顕著に吸収した大臼歯が保存されたものですが、原因が歯周病でも歯根ハセツでもなく、歯髄腔の感染腐敗であるのならば、見かけ上は抜歯が当然のような状態でも通法の根管治療で救済が可能となる例です。
 
 


治療前の状態


歯槽骨の吸収と根尖病巣


治療3年後の歯槽骨の回復


左)クラウンの脱離により失活して歯根周囲の歯槽骨が顕著に吸収した状態
右)抜歯を回避し根管治療をおこない回復してきた歯槽骨

  以上は、歯周病に対する予知性の高い処置や根管治療・修復治療の質が失われるべき歯を救済したものですが、歯を長期に残せるという診断は治療技術に密接に関わったものとなっています。 一方で、抜歯しかない、長持ちしない、インプラントしか方法がないという診断も、またありえるわけですが、患者さんの利益とは別の次元の話となります。

 診断の妥当性は、基礎的な研究の進歩、最新器材の応用、臨床現場での再評価等に拠り、おおきく変化してまいります。 たとえば最近の神経生理学の発展でもたらされた知見は、歯や口腔周辺領域の痛みが、歯や歯周組織と離れた場所に原因が存在することもあることを理解させます。 また判然としない自覚症状や不定愁訴を、従来のように精神的問題やかみ合わせの不調和と片づけるのは短絡的姿勢であることを示唆しています。 一方、診療用顕微鏡が臨床に取り入れられますと、ただでさえ細かい作業の歯科における感覚的治療の限界が確認されます。  
  歯肉溝という歯の生え際の歯肉の隙間からは大量の滲出液が湧き出し、この部位における接着修復の難しさがわかります。 接着性充填材のようにテクニックセンシティブな歯科材料は、口腔環境では本来の物理的特性を活かされずに、取れた緩んだを繰り返すこととなります。 研究者の言うように充填後の知覚過敏はマイクロリーケージによる象牙質の歯髄刺激であるといって間違いありません。  根管治療*においても同様に、拡大洗浄しようとする根管が如何に複雑な形態で清掃が困難であるかは今さらながらに確認されます。 いずれも治療法の限界を示すものです。  どんなにエキスパートがおこなっても、これらの治療で完璧はありえないことも診断材料にいれなければなりません。 また
EBM(=Evidence Based Medicine科学的根拠にもとづく医療)の基礎とされるEvidenceが検証の結果、実は科学的真実にほど遠いこともままあるので、研究者とちがい批判精神のない臨床医が齧って来たような知識が、すぐ実際臨床に使われるのは診断と別個の問題となるでしょう。

  臨床における診断の混乱を避けるためには、”何が本当の問題であるか”診断と治療の密接な関わりのなかで、思い込みを避け、事実を受け止め、ものごとを整理再評価しなければなりません。 診断の要であるドキュメントの質は治療の質に直結します。 なかでも保存治療では一番の診断資料であるレントゲン写真がちゃんと記録されないことには、診断もへったくれもないのです。 
 横道に逸れますが、世間をにぎわす”かみ合わせの治療”に当院は否定的です。 噛みあわせに関わる治療はあくまで快適で機能的な歯の接触関係の回復にあり、副次的な諸症状の改善はかみ合わせの不調和感を意識しなくなったことや、噛みしめ癖の軽減に求めることができるでしょう。 歯が無く入れ歯だったり、ひどいかみ合わせでも(咀嚼活動は1日20分間くらいなので)なんともない方が多数なのも事実です。 一方で全身的症状と咬合を強く関連づけるようなお話(かみ合わせで免疫力が上がるとか)もありますが、サイエンスと離れた牽強付会な論法が懸念されます。 技術的にも噛み締めの力を負荷する顎関節のダイナミックな変化や、歯軋りの物理的・心理的コントロールの難しさがありますが、たった1本の歯(冠)を装着するのに、たくさんの調整が必要な施設では、20本以上の歯の”かみ合わせ”を治療するなど不可能に近いでしょう。 それよりも治療した歯がムシバになるほうが心配です。 語弊があるかもしれませんが、治療を受けなかった歯が長持ちしているのは厳粛な事実で、”言うは易く行なうは難し”が歯科治療の本質のようです。  参考までに。。


*このページは患者さん向けの内容ではありませんね! 若い歯科医の方が対象でしょうか? うるさい年寄りの説教です。  なお、かみ合わせの違和感に非常にお悩みの方はコチラをご覧になられますことをお勧めします。 興味をそそられるサイトです。

*根管治療(歯内療法)については、1日4、5人程度の患者さんを専門的に治療する(米国における有能な専門医に比肩する)歯科医も少しづつ増えてまいりました。 東京地区でも一桁の人数ですが、それらの先生には我々一般開業医では真似のできない内容の診断・施術が期待できるようです。 知識も技術も道具も治療時間もすべて違います。 当院もできれば、根管治療はすべて紹介したいのがやまやまです。 治療費用も米国並みですが。。

 

 
 

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