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顎関節治療の周辺


 歯科雑誌のクリップ (某著名臨床家N氏の記事から、ご本人の了承済み

   最近の歯科の講習会の紹介記事を見ていると、咬合がらみの顎関節症?治療のコースの案内が多い。そして、その内容は科学を装った似非(エセ)科学的考察に従った治療が多いので非常に不安になる。先頃厚生省が打ち出した、咬合と全身との関わりについての興味を逆手に取ったのかもしれない。マスコミもそれに便乗して、歯科医師が科学的に思考し考察する邪魔をしている。

 また、似非科学的考察に従った顎関節症?治療が流行りはじめた理由は単純に、われわれ歯科医師が学生時代に科学的思考を行う訓練を受けていないからである。科学的思考を行うことは、実は非常に苦しいのである。このこともあって、われわれは日常臨床を経験主義的なあるいは神秘主義的な思考の基に行うようになってしまったのかもしれない。

 先に科学的思考は苦しいと述べたが、その理由は単純で「目の前にある意見を、まず疑ってかかる」ことから考察を始めなければならないということにある。そして現象は現象として謙虚に受け止めなければならないのである。 とくに○○先生、○○教授が書いた教科書や教えてくれたことをも疑うことから始めないと、真実から遠ざかってしまう可能性がある。過去にも科学的真実であると誰もが信じたことが、実はまったく違っていたというようなことは山ほどある。また、科学的真実と言われていることも実は単なる仮説にすぎず、数年後には反対の意見が正しい仮説として認められるかもしれない。たとえば、外側翼突筋上頭は開閉口運動に際して、関節円板の位置コントロールを行う働きがあるという筋電図学的研究成果の報告が一世を風靡したことがある。この研究は下顎機能を考える上でとても合理的で魅力的なデータを見せてくれた。世界の多くの研究者が追試を行ったところ、意見が幾つかに分かれた。そこで精密な解剖学的研究を行ったところ、この魅力的な研究成果は、実験の方法に問題があり、従来の仮説のほうが真実に近いのではないかということになっているようである。

 このように、科学的思考は常に苦しいかもしれないが、様々な意見を多くの人々が時間をかけて検証し続けるものである。したがって、科学的意見は端から見ていると、いつもふらふらしているように見えるかもしれないが、いつも苦しんでいるものなのである。それに比べれば、似非科学的意見はほとんど宗教であるからカリスマの科学的意見として表現されるので、非常にどっしりとして頼りになるように見える。

 顎関節症においては、この似非科学がとても多く、しかも科学的装いをしているので非常に科学的に見える。科学的考察をする訓練を受けていないとコロッとだまされてしまうのである。しかも、顎関節症や顎機能解析に関しては非常に多くの解析装置が開発され販売されており、それさえ用いればばっちり診断、治療ができるというような講習会が数多く開かれ、著名な教授が説法するので、その装置を用いたデータがあれば科学的真実であるというような錯覚に陥らされる。筆者の目から見れば「そのような楽な道具があるわけないのである。

 

*以上の記事はご縁があり15年以上にわたり、たくさんの情報をいただいておりますN先生(住まいは当院近辺)の顎関節治療やかみあわせ治療にまつわる警鐘です。

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